第19章 旅行
「そいつの兄貴、犯罪者なんだぞ。なんの罪もない人間を殺した頭のおかしい人間なんだよ。そいつも同じなんだよ。ほら、よく言うだろ。蛙の子はかえ――――――……」
それ以上、好き勝手言わせるわけにはいかない。
マスクを少しずらし、鋭い眼光と圧を掛ければさすがの見栄っ張り虚勢強がり野郎は言葉を呑んだ。
親友の悪口を聞かされて、好きな女のことを貶されて黙っていられるほど僕は大人じゃない。
傑とは全然違うよ。
目元は似ているけど、性格も若干似てるところあるけど、それでも己の持つ信念は全く違う。
何をもって同じだと言ってるんだ。
「お前、見る目ないね」
「え……」
その二つの目ん玉は今まで一体何を映してきたんだ。
視力が低下しているんじゃないの、それか腐っているか。
腐ってるなら眼下にでも行って新しい義眼を用意してもらえ。
まぁ、用意してもらったところで何も変わらないと思うけど。
「のいいところ全然知らないなんてかわいそう。教えてなんてあげないけど」
僕だけが知っていればいい。
のいいところも悪いところも。
ムカつくところもクソ生意気なところもかわいいところもロマンチストなところも。
全部全部、僕だけが。