第19章 旅行
「へぇ。じゃあ、僕たちそろそろ行かなきゃだからさ、ごめんね」
「もし、よかったら連絡先交換しませんか?その、色々夏油さんのことで相談とかありますし」
「あー、ごめん。僕ね、スマホ持ってないんだ」
連絡先なんて交換するわけないじゃん。
のことで相談?
ふざけんのは顔だけにしろよな。
オマエらがこいつにしたことでこいつがどれだけ傷ついているのか考えたことないでしょ。
肉体的暴力、精神的暴力、そして言葉での暴力。
力のない人間はそうやって人を傷つけて優位に立っていると勘違いして、気持ちよさを味わう。
吐き気のするオナニーを人前で晒すな。
家に帰って勝手に一人でシコってろ。
僕はポケットからスマホを取り出し、恵に電話を掛ける。
ちょうどこの店に向かっている最中だったみたい。
「もしもし、恵?僕だけど」
≪五条先生?なんですか≫
「今と一緒にいるんだけどさ」
≪え、そうなんですか?≫
「そうそう。だから恵たちはそのまま観光してていいよ」
≪…………わかりました≫
僕の声で何かを悟ったのか、恵は何か言いたそうな雰囲気を出していたけど、何も言わずにそのまま電話を切った。
察しのいい奴でよかった。
こんな場面、恵たちには見られたくないだろうし。