第19章 旅行
「じゃん。恵たちと一緒じゃないの?」
近くに恵たちがいないことはすぐに分かった。
きっとはぐれでもしたんだろう。
「はい」「いいえ」では答えられない質問を投げかけても、彼女は何も言わずに唇を噛んでいるだけ。
あまり強く噛まないの、血が出るよ。
さっきからチワワみたいに震えてる肩。
できるだけ安心させたくて、そっと自分の手を置いた。
ちらりと横目で彼女の前にいる人物を見る。
そいつらは僕を見て驚いているみたいだけど、がこんな風になったのはオマエらが元凶か。
不安そうな表情で僕を見る彼女。
そんな顔しないでよ。
君には笑っていてほしいのに、それを邪魔する奴がいるのがムカつくよね。
顔に出さないけど。
僕は大人だし。
「ん?この子達誰?の友達?」
「ち、が……」
何も知らないふりをしてそう尋ねれば、はか細い声で否定をした。
が、上から覆いかぶさるような圧のかかった声が彼女の言葉を掻き消す。
「そうでぇーす!!私達、中学時代の夏油さんの友達でぇ、偶然会ったからお喋りしてたんですぅ」
甲高い猫撫で声。
中学の同級生か。
なるほど、今のでがどういう中学生活をしていたのか大体想像がついた。
そりゃ、あんな卑屈にもなるし喧嘩っ早くもなるし口も悪くなるし素直にもなれなくなるよね。