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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第19章 旅行








理解の範疇を超えた時、人間は容易に物事を受け入れることはできない。
彼等にとって私はその対象だった。
理解できないから、怖いものだから遠ざけるために、安全な場所に避難するために、そのための誹謗中傷だったのかもしれない。

けれど、もし。
私が、兄が、なんでもない普通の人間だったらならば。
こんな結果にはならなかったのだろうか。

幾度となく頭を駆け巡る「もしも」の妄想。
とうの昔に捨てて諦めたはずの羨望と後悔と夢物語の累積。
解っていながら、苦しむと知っていながらも、それでも捨てきれなかった願い。

力なんて、欲しくなかった。
そうしたら私はお兄ちゃんに殺されていて、こんな思いをしなかったはず。

私とあいつらで一体何が違うと言うのか。
力があるってだけで、見えるってだけで、犯罪者の身内ってだけで。
まるで私が化け物のように扱って。
ふざけんな。

私だって人間なんだ。
お前らと何一つ変わらない、ただの人間なんだよ。

「うっ……」

ぶわりと涙が零れた。
路上で、しかも長身の男に手を引かれた女子高生という図に周りは怪しい目で五条悟を見ていた。
若干焦ったような声の五条悟が私と目線を合わせるために中腰になる。

「泣くなよ」
「泣いて……ないっ……」
「鼻水垂れてるから」
「これ、は……心の汗、だし……」
「きったな」

カバンの中からティッシュを取り出して、鼻を噛んだ。
一度零れてしまえば、涙なんてものは簡単に止められるはずもなく。
五条悟は軽く息を吐いて、近くの公園まで私を引っ張った。

公園には家族連れの人たちがいっぱいいて「紅葉が綺麗だね」って会話が聞こえて、上を見上げる。

赤、黄、橙、と綺麗なグラデショーンと空の青さがすごくマッチしてて本当に綺麗だった。




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