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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第19章 旅行








「行こうか」

電話を切った五条悟は私の右手を取った。
骨ばった大人の男の手に包まれた私の右手は一瞬にして熱くなって、パンダに握られた時とは全然違くて、心臓が大きく跳ねる。

「ちょ、ちょっと待てよ‼あんた、そいつがどんな奴か知ってて一緒にいるのか?」
「……君は、知ってるの?がどんな子か」
「お、おい。やめろよ……」

声色が1トーン低くなった。
その低さに、斎藤は少し怯んだが退くに引けない状況だからか、虚勢を張った。

「そいつの兄貴、犯罪者なんだぞ。なんの罪もない人間を殺した頭のおかしい人間なんだよ。そいつも同じなんだよ。ほら、よく言うだろ。蛙の子はかえ―――……」

斎藤は、その後に続く言葉を言わなかった。
顔を青くしてぶるぶると震えてる。
それは皆川も同じで、酷く怯えた表情をしていた。
彼等の視線を追って、五条悟を見て、私もひゅっと喉が鳴った。
マスクを少しずらしたその瞳は、今まで見たこともないくらいに、冷徹で鋭く今にも人を殺しそうな、そんな目だった。

しかし、すぐにマスクを被りいつものあのうさん臭い笑顔が張りつけられた。

「お前、見る目ないね」
「え……」
「のいいところ全然知らないなんてかわいそう。教えてなんてあげないけど」

それだけ言って、五条悟は私の腕を引いて店を出た。
零れそうになる涙が零れないように、一生懸命堪える。
繋がれた手から伝わる体温が、さっきまで凍えて怯えて動けなかった冷え切った心を溶かしてくれた。




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