第19章 旅行
聞きなれた声に後ろを振り向くと、真っ白い髪の毛をした190越えの男が立っていた。
黒いマスクで目元を隠した無駄にデカいそいつが、ヒーローのように見えた。
「じゃん。恵たちと一緒じゃないの?」
ニコニコと笑って私の肩に手を置く五条悟。
てか、なんでお前ここにいるんだ?
一人食べ歩きツアーを開催していたんじゃないのか?
「え、誰?身長高くない?」
「夏油の彼氏?」
なわけねえだろ、教師だ。
だけどうまく言葉が出てこなくて、私はただ五条悟の顔を見ていた。
「ん?この子達誰?の友達?」
「ち、が……」
「そうでぇーす!!私達、中学時代の夏油さんの友達でぇ、偶然会ったからお喋りしてたんですぅ」
気持ち悪いほどの猫撫で声。
かっこいい奴なら誰でもいいのか、この女。
きっしょ。
「へぇ。じゃあ、僕たちそろそろ行かなきゃだからさ、ごめんね」
「もし、よかったら連絡先交換しませんか?その、色々夏油さんのことで相談とかありますし」
「あー、ごめん。僕ね、スマホ持ってないんだ」
いや、その嘘は流石にきついだろ。
現代社会でスマホを持ち歩かない若者なんていないだろ。
いたら国宝級だぞ。
そう言いながら、五条悟はポケットからスマホを取り出し、
「もしもし、恵?僕だけど。今と一緒にいるんだけどさ。そうそう。だから恵たちはそのまま観光してていいよ」
いや、嘘言っておきながらすぐにスマホをだすなよ。
こいつらの顔見てみろ。
訝し気にお前を見てるぞ。