第19章 旅行
力があるか否か。
狗巻棘とこいつらの違いはそれだ。
そしてアイツは、必要無しに人を呪ったりしない。
おにぎりの具で語彙を絞って、誰も傷つけないようにと。
力があるから、その力をいい方向へ使うために。
こいつらは、力がないからこうして平気な顔で人を傷つける。
力が無い者は、こうして自分が気持ち良くなるために暴力を振るうんだ。
私に、これらをどうこうする術はない。
逃れる術も。
だから、私は何もしない。何もできない。
足元が崩れる感覚がする。
関わりを持たないように、一人でいたのに。
お前らが私を避けたりするから、じゃあそれでいいやって思って一人でいたのに。
それすらもいけないみたいな雰囲気を作って。
「変なことで炎上とかしないでね。中学の同級生枠でテレビとかにでたくないし」
「でもインタビューはされたくね?"いつかはやると思ってました"って言ってみたい」
「うっわ。サイテー。でもわかる」
何もしていないのに。
私は静かに過ごしたかっただけなのに。
なんで、そこまで言われなくちゃ……。
非術師だからって、好き勝手言いやがって。
お兄ちゃんの気持ちがすごくわかる。
こんな奴らのために私たちは命を削って、そして死んでいく。
こいつらのためなんかに。
だけど、私は呪術師だから。
お前らのために命を削る。
削って、そして、何も知らないまま、お前らは死ね。
私に救われている命だと知らないまま、死んでしまえ。
私の生きる原動力の一つは、それだ。
「?」
奥歯を噛みしめて、自分の中に生まれる黒い感情をなんとか押し込んでいた時、名前を呼ばれた。