第19章 旅行
それから私たちは、足湯に浸かったり食べ歩きをしたりして楽しい時間を過ごした。
本当に楽しい時間を。
そして、私はあいつらとはぐれた。
「え……?」
何ではぐれたのかわからないけど、きっと私がお土産屋の一つであるガラス細工店で時間を忘れてぶらぶらしていたせいだと思う。
人も多くて、きっとあいつらは私が居ないことにすら気づかずに店を後にしたんだろう。
結果私は一人で未だに店の中にいる。
ここで待っていれば迎えに来るだろうか。
スマホを開けば、ラインには大量のメッセージが流れている。
伏黒に電話をかけ、ガラス細工店にいることを伝えればすごい大きなため息が電話の向こうで聞こえた。
迎えに行くからそこを動くんじゃねえと、言われたため私は大人しく店内を回る。
でも一通り見てしまったから、時間が過ぎるのが遅い。
何分で来るんだろう。
動くなって言われたから動きませんけども。
なんて思いながら、店内をぶらぶらと歩きまわる。
「夏油?」
名前を呼ばれ、振り向いた。
迎えに来るの早いな。
なんて思った。
けど、そこにいたのは伏黒でもパンダでも狗巻棘でもなかった。