第19章 旅行
そんなこんなで今に至る。
「で、行きたい場所は決まったのか?」
と、パンダがカルパスを食べながら聞いてきた。
「この"ル・トラン"カフェに行きたいんだよね。オリエント急行の食堂車って書いてあって、すごい気になる」
「そこ、俺も気になってた」
「でもちょっとばかし遠い。バスで30分くらい」
「30分くらいどうってことないだろ」
「しゃけ、いくら」
「そうそう。行きたいなら行こうぜ。せっかくの旅行なんだし」
パンダの言葉が最後の一押しとなった。
自分の願望がこうもすんなりと通ると、いたたまれなくなってしまうのは何故だ。
でも、伏黒も気になっていたみたいだし、いいよね。
「今日はお前の行きたい場所優先的に行くぞ」
「なんだよ、それ」
「俺達からの誕プレだと思って、受け取れよ」
「明太子」
まさかの発言に目を見開いた。
「いや、誕生日4月なんですけど私」
「細かいことは気にすんな。野薔薇の誕生日祝いも兼ねてるんだろ、真希」
「ん?ああ。ていうかそう言う話だったろ」
「なんも聞いてない」
「言ってなかったか?すまん」
適当すぎやしないか。
でも、こうして自分の生まれた日を祝ってもらえると言うのは、すごく嬉しい。
祝ってもらった事なんて、記憶が曖昧なほど小さい頃だったし。
「誕生日いつ?俺ね、3月20日!!」
「4月13日だけど」
「え、もう過ぎてんじゃん」
「、後で誕プレ渡すから楽しみにしててよ」
「俺も今日買ってくる!!楽しみにしてて!!」
「わかったから、虎杖は声のボリュームを下げろ」
テンションが上がっているのか、声のボリュームも大きい虎杖に注意しながら、私は小さく笑った。