第18章 術式
昔の記憶。
脳裏に浮かぶ沙織ちゃんの姿。
本当は、沙織ちゃんに言いたいことがあったのに。
それを言えずに別れてしまった。
後悔、とは違うけど。
あの時ちゃんと言葉にして伝えていればよかったなって今でも思う。
だから、にはそんな風に思ってほしくないから。
素直になって欲しいと思う。
意固地にならずに。
知っているのよ、私。
あんたがあの人を好きなんだって事。
そしてそれを見て見ぬふりをしていることも。
どうして。
好きならそう言えばいいじゃない。
気付かないままの方がいい事もあるかもしれないけど、正直どっちも同じだと思うけど。
お互いに傷つけて傷ついて。
踏みつけて泣かせてそれで拗らせてバカみたい。
似た者同士の天邪鬼。
あんたが弱音吐いて泣いて私に甘えてきた時は、ちゃんと慰めてあげる。
相談に乗ってあげる。
だから、溜め込まないでよ。
私に相談してよ。
甘えてよ。
そしたら、どろっどろに甘やかして高めの慰め料請求してあげる。
ぼんやりと流れる景色を見つめるの顔を眺め、私は静かに瞼を閉じた。