第18章 術式
「ごめん野薔薇。勝手な真似して」
謝る要素なんてどこにもないのに。
男どもがいなくなった途端、しゅんとするその姿は子犬みたい。
何そのギャップ。
女はギャップに弱いってわかっててそれやってるんだとしたら、相当人間誑しね。
私が恋愛裁判長だったら即有罪って判決下すわ。
未だに引かない熱を隠していたら、こっちを向くもんだから更に赤くなる。
「ちょ、今こっち見んな」
「いや、ごめん。穏便に済ませようと思って……」
「にときめくとは思わなかったわー。屈辱」
「屈辱なのかよ」
クソでかため息を吐いて、赤くなった顔を落ち着かせるためにパタパタと手で仰いだ。
繋がれた手がするりと抜ける感触がして、私は咄嗟にその手を繋いだ。
「の、野薔薇……さん?」
戸惑うの顔は少し赤い。
やられたらやり返す。
半沢直樹もそう言っていたでしょう。
乱れた髪の毛を一度かき上げ手櫛でほぐし、白い歯を見せて笑う。
「デートなんでしょ。今日一日は手を繋いでいましょ」
「あ、はい……」
先にそう言ったのはアンタなんだから、最後まで付き合ってもらうわよ。
「野薔薇って女にモテそう」
「そのままそっくり返してやるわよ」
女子高校生二人。
恋人繋ぎをしたまましばらくショッピングを楽しんだ。
周りの目なんて気にもならないほど、すごく楽しくて。
友達と、親友とこうして一緒に遊んで笑えるのがすごく楽しくて、嬉しくて、幸せって意外と身近にあって当たり前のものなのかもしれないわね。