第18章 術式
「の呪力はさ、簡単に言えば温度と圧力みたいなもので、鍵を通して物質の状態を変化させてるんだよ。ここまで言ってることわかる?」
「………ちょっと待って。整理するから」
「3分間だけ待ってあげる」
「突然のムスカはやめろ。バルスすんぞ」
頭で整理をするも、なかなかうまくまとめることができずに、私は持ってきたカバンの中からノートとシャーペンを取り出した。
そして畳に座り込み、五条悟の言った言葉をまとめる。
「悠仁にさ、呪力は電気に似ているって言ったけど、お前の場合は温度と圧力みたいなもの。鍵に流し込む呪力の温度と圧の掛け方しだいで物質を大きく変化させてるんだよ」
"開錠"の場合、固体だったら物質の流れをこじ開け、液体だったら物質の流れを吹き飛ばしている。
"施錠"の場合、固体だったら物質の流れを停止し、液体だったら物質の流れを止めている。
"破錠"の場合、固体でも液体でも物質の流れをぶっ壊している。
そういう風に使っているけど……。
自分の呪力がそういう変化をさせているとは思っていなかった。
だって、呪力量に違いはあっても呪力そのものに違いなんてあるなんて、誰も思いはしないだろう。
それこそ電気量に違いはあっても電気そのものに違いが無いように。
「呪力をコントロールすれば、の術式は空気を失くす事もできる」
五条悟の言葉に、私はハッとした。
東堂にも同じことを言われた気がする。
それはそう言う意味だったのか。
だけど……。
「それは……無理だろ」
「今は、ね」
「……」
「それこそ圧力だよ。山に登るとポテチの袋が膨らむ原理と一緒。の呪力で空気を重くしたり軽くしたりできるし、なんなら絶対真空だって作りだすことができる」
そんな壮大なことが、私にできるとは思えない。
絶対真空だなんて、つまりそれって「何もない空間」じゃないか。
私の術式はそういうものじゃ……。