第16章 野球
「さっきの質問の答えだけど……」
「うん?」
「真希のことなんか、嫌いよ。大嫌い」
真希には、私にはない才能がある。
生まれつき呪力を持ってはいるものの、術式の関係で基本的に銃などの武器に呪力を籠めて打ち出すことしか出来ない私と違って、術式と引き換えに人間離れした身体能力を与えられた。
本当なら、術式を持って生まれるはずだったのは真希の方だったのに。
私が持って生まれてきてしまったから。
禪院家では認められなかった、真希の才能。
メカ丸と同じ、ある意味逆の"天与呪縛"。
「嘘つきなのよ、真希は。絶対おいていかないでって言ったのに、あっさり家をでてしまったんだもの。呪術師としての道を歩んでいった。……私は、呪術師になんてなりたくなかったのに。強くなりたいとも思わない。頑張りたくもなかった。努力も痛いのも怖いのも、もう嫌なのよ」
湯気立つコーヒーを見つめながらぽつりぽつりと自分の気持ちを吐露してしまうのは、目の前の人物も似たような境遇だから?
共感、してほしいと思ったの?
顔をあげてちらりと、夏油を見れば目にたくさんの涙を溜めていた。
零さないように我慢している顔は笑っちゃうほど不細工。