第16章 野球
――禪院真依side――
交流会も終わり、私は京都に帰る前に少しだけ東京を観光していた。
他の連中は一足先に京都に戻ったから、私一人の観光。
と言ってもぶらぶらと歩いていただけだけど。
京都には売っていないコスメや服などを買い漁り、お茶でもして帰ろうかなと思っていた時、私の目の先には夏油がいた。
向こうは私に気が付いていない。
知らないふりでもしてお茶をすればよかったのに、私ったらどこまでもお人よしね。
気がついたら彼女に声を掛けていた。
だって、私服がダサすぎて無視なんてできなかったんだもん。
「あ、ぜんまいちゃんだ。なにしてんだ?」
私がまだ東京にいることに疑問を抱いたのか、夏油は首を傾げる。
そのクソダサい服でタピオカなんてしゃれたもん飲んでんじゃないわよ。
なによ、"Low Power"って。
低電力って意味って知ってそれ着てるの?
だとしたら相当ダサいわよ。
「……ちょっと来なさい」
無理矢理彼女の腕を引いて公衆トイレの中に入る。
先ほど買った服を渡し、着るように言えば困惑しながらも素直に着た。
あ、着るんだ。
なんでそこは素直なのよ、気持ち悪い。
「てか、なんで私オマエの言いなりになって服着てんだ?」
「知らないわよ。……まあまあね」
ノリツッコミ辞めてもらえる?
ここ東京だから、関西じゃないから。