第16章 野球
結局、私がメカ丸を壊したせいで試合は2回の裏で終了。
この時点で東京校は2点が入っているため、勝利は東京校となった。
訳だけど……。
「こんな不甲斐ない試合になるとは思わなかった」
「それは夏油が野球下手くそだったからでしょ」
「………そう、だけど」
「勝ちは勝ちなんだからいいじゃない。来年はもっとうまくなってればいいわけなんだし」
グラウンドに並んで挨拶をした後、庵歌姫が私達のベンチへとやってきて、総指揮官である私に手を差し出し「いい試合だったわ」とか言うから、また頬を膨らまし拗ねた言葉を言ってしまった。
私が試合をダメにしてしまったと言うのに、庵歌姫は咎めるどころか私を慰めてきた。
その対応に、その優しさに、私は目を大きく見開く。
「交流会は楽しめた?」
「う、うん……」
「ならよかった。今度はちゃんとメカ丸も入れて試合しましょうね」
「……庵、歌姫……。いや、歌姫先生ぇ……」
にこりと笑う歌姫先生のその包容力に私は負けた。
両手を大きく広げて抱き着けば、歌姫先生も私を抱きしめてくれて。
ああ、いい匂いがする。
なんだ、この安心感。
「なんで歌姫とが抱き合ってんの?僕とも抱き合おうよ」
「嫌だ。私は今歌姫先生と交流を深めてるんだ」
「なんで歌姫の事先生って言ってんの?」
「なんでって、歌姫先生は教師だからだよ」
「知ってたかな、。僕も一応教師で君の担任なんだけど」
「ぷぷっ。日頃の行いのせいじゃない?」
歌姫先生と抱擁を交わしていたら、五条悟がやってきてゴチャゴチャと何かを言っている。
歌姫先生の言う通り、お前の日頃の行いのせいで先生とは認めたくないんだよ。
その後、私と歌姫先生は携帯番号とラインを交換し、勝利の祝いとして五条悟や他の連中と焼肉を食べに行った。
焼肉は、今まで食べたどの焼肉の肉よりもすごく柔らかくてジューシーで、簡単に言えばすっごい美味しかった。