第16章 野球
伏黒の言葉に虎杖は白い歯を見せて笑った。
「ハハッ。相変わらずだな」
「私だって強くなるし。誰にも、負けないくらい強くなってやる」
「私抜きで話進めてんじゃねーよ」
「それでこそ、ブラザーの友達だな」
空気が止まった。
意気込んでいたこの空気をぶち壊すかのように、そこには東堂がいて何度も頷いていた。
いつの間にとか、なんでここにとか、そう言う疑問を抱く前に、虎杖は窓から逃走し、東堂は虎杖を追いかけて行った。
「どこへ行くブラザー!!」
「感謝はしてる!!でも勘弁してくれ!!あの時の俺は正気じゃなかった!!」
「何を言っている!!ブラザーは中学の時からあんな感じだ!!」
「俺はオマエと同中じゃねぇ!!」
遠ざかる二つの声。
私達3人はそれを黙って見送るしかできなかった。
「嵐が……去った」
「塩撒くわ」
「鍵ちゃんと閉めておけよ」
野薔薇、私、伏黒が呟く。
どっと疲れた気がするのは何でだ。
東堂のせいか。
すごい威力だな。
虎杖、頑張れ……。
心の中で虎杖にエールを送った。