第16章 野球
「じゃんけんで決めればいいだろ」
「……伏黒の言う通りだな。ここは公平に決めようじゃないか、」
「ふっ。この私にじゃんけんで勝つなんて百億年早いんだよ」
「言っとくが、心理戦は通用しねえぜ」
ああ。
前に野薔薇とじゃんけんした時の事を言っているのか。
私がそんな小癪な真似をすると思うか。
「虎杖。オマエは必ずパーを出す」
「なんだ、催眠術か?効かねえぞ……」
「パーを出さないとお前の部屋にあるグラビアポスターを全部燃やす」
「……え?」
「じゃーんけーん……」
「え、あ、ちょ……、」
「ぽんっ」
声に合わせお互いにじゃんけんの手を出した。
私はチョキを、虎杖はパーを。
「だから言ったろ。私に勝つなんて早いって」
「……さん、それ脅迫と言うのでは?」
「勝ちは勝ちだろ」
こうして最後の一切れは私の胃の中に収まった。
小さい声で「卑怯くせえ」問う声が3つ程聞こえたが、卑怯上等。
それが勝負だ。
虎杖はどこか腑に落ちない表情をしていたけど、諦めたのか伏黒に向き直った。
「でもまぁ、伏黒の怪我が大したことなくて良かったな。ピザ食えてるしなっ」
「あの時呪力がカラカラだったのが逆に良かったみたいだ。根を取り除いた時点で家入さんの治せる程度だった。ピザに関してはもっと消化のいいもん持ってきてくれ」
「文句言うな。今度からもう奢らねえぞ」
心配して見舞いとして持ってきてやったのに。
文句を言う前に感謝をしろよな。