第16章 野球
と、思っていたら。
至極真面目な声で五条は言葉を吐き出した。
「悠仁はさ、呪術師としてはまだ未熟だ。それを僕や七海、、今回は葵がサポートしたわけだけど。だからかな。急激な成長に驚いたかもしれない。でも、焦る必要なんてないよ。レベル1からレベル10に上げるなんて簡単だろ。逆にレベル99からレベル100に上げるのは難しい」
「……」
「僕が言いたいのはね。オマエもちゃんと成長してるってこと」
「……本当かよ」
「ほんとほんと。僕が嘘言った事ある?」
「息を吸うように嘘ついてるだろ、今まさに」
「失敬な。適当な事は言うけど、嘘なんてあんまり言わないよ」
「もういいよ、それは。話の続きをして早く帰れ」
話しが脱線しそうになったのを何とか軌道修正する。
そんな私の頭を五条悟は優しく撫でる。
「オマエが勝手に掘った小さい溝なんて、僕も悠仁も誰も知らないし気にしないし、そんなもの、何度だって飛び越えて何度だってに手を差し伸べるよ」
「……!!」
「そういう奴らがいっぱいいるんだよ、ココには。知らなかっただろ」
喉の奥を鳴らして笑う男に、なぜか涙が溢れそうになった。