第16章 野球
「葵から聞いたよ。がいなきゃ、あれだけの怪我じゃすまなかったって。特級相手によく頑張ったね」
「……ぇよ」
「ん?」
「……そんな慰め、いらねえんだよ。東堂から聞いてんならもう知ってんだろ。私は今回何もできてねえよ。何もしてねえよ」
「そんなことはないでしょ」
「そんなことあんだよ‼」
私の怒号に、二人は驚いた顔一つせず涼しい顔で私を見ている。
まるで私の心の奥底のドロドロした黒い感情を吐き出させるのが目的だと言わんばかりに。
簡単にその手に乗ってしまった私も私だけど、余裕なんてどこにもなかった。
「私は自分の術式すら理解してないんだとよ!!んなわけねえだろうが。理解してるよ‼理解したうえで私は弱いんだよ‼虎杖はあんなに強くなったのに……。私は全然だ……」
虎杖に負けたくない、伏黒に負けたくない、野薔薇に負けたくない。
そう思っているのに。
私一人置いていかれている気がする。
止めどなく溢れる汚い感情、零れる涙。
シーツにたくさんのシミができるけど、それすらも悔しい。
なんで私は今泣いているんだろう。
弱いから、すぐに泣いてしまうんだ。
私が、弱いから……。