第16章 野球
「なんで頭から布団被ってるの?の顔が見たいなぁ」
「………」
「ねえねえねえ。布団から出てきてよ。僕が寂しんぼだよ?」
「………」
「いつまでそうやって黙ってるつもり?黙ってれば僕が黙って帰ると思った?でもざーんねんでしたっ。僕は性格が悪いからね。が布団から出てくるまでずっとこの部屋にいるし、こうやってオマエに話し続けるし、なんなら添い寝もしちゃうっ」
「うるせえな、さっきから!!誰にも会いたくねえからこうやって部屋に鍵かけて頭から布団被ってんだろうが!!察しろや!!」
「あはっ。やっと顔、見せてくれた」
いい加減うざくなってきてしまって、私は布団を剥いで叫んだ。
これじゃあ考え事をしたくてもできないし、何よりこいつがずっと部屋にいると思うだけで疲労感が半端ない。
部屋には五条悟と家入硝子がいて、私の事を見つめている。
もう一つの足音はこいつだったか。
五条悟はベッドの端に座り、家入硝子はデスクチェアに腰を下ろした。
何しに私の部屋に来たんだろう。
特に家入硝子。
他に負傷者がいるかもしれないんだからそっちに行けよ。
って思ったし言った。
「お前も負傷者だろ」
「どこもケガしてねえよ。切り傷とかは、あれだから。ちょっと派手に転んだだけだから」
自嘲気味に笑った。
他の奴らみたいに名誉ある傷なんかじゃない。
自分で勝手に転んで勝手に作った傷だ。
恥ずかしいことこの上ないだろう。