第16章 野球
布団に潜り込んで、今日の事をずっと考える。
自分の無力さに、不甲斐なさに、自分自身に嫌気がさす。
そしてこんな風にうだうだ悩んでいじけて拗ねてごねているのも。
「…………くそっ」
虎杖の事は好きだ。
もちろん、友達としてだけど。
でも、急激に成長するあいつに。
今まで一般人だったくせにとか、宿儺の器だからだろとか、そう言った嫉みや僻みが私の心を蝕んでいく。
そう思いたくないのに、自分よりも才能があって強いあいつに。
ただただ、嫉妬ばかりしてしまう。
もしかして。
お兄ちゃんも。
こんな気持ちになっていたのだろうか。
五条悟、という同級生を持って。
親友を持って。
自分にないものを持った人間に、自分よりも強い人間に。
こんな感情を抱いたばかりに。
お兄ちゃんは堕ちてしまったのか。
その時。
部屋の扉がノックされた。
今は誰とも会いたくない。
誰にもこの顔を見られたくない。
誰にもこの汚い感情を知られたくない。
だから狸寝入りをしたのに、かけたはずの鍵はいとも簡単に外された。
「~」
聞き覚えのある声、というか、聞きたくもない声に私は布団を頭から被った。
聞こえる足音は二つ。
一つはあいつだとして、もう一つは誰だ。
布団を剥ごうとする五条悟。
だけど私も負けじとそれを抑えた。
マジでやめろ。
今の私は相当ひどい顔をしているに違いないんだから。