第16章 野球
――夏油side――
あの後、高専に戻った私達は伏黒や他の連中の様子を見るために医務室に寄った。
その間に補助監督や教員などは今回被害が出た場所や人数を調べている最中だった。
医務室の扉を開くと、目の前には結構な人数の生徒がいた。
治療を終えたのか、ベッドで爆睡をしているのは加茂憲紀と禪院真希と伏黒の3人。
こいつらが重症この中では重症なのだろう。
「お前らは平気そうだな」
私達の姿を見た家入硝子は疲れた顔をしていた。
そりゃそうか。
この人数を相手にしているんだから。
「こいつら平気なのか?」
「ん?ああ。命に別状はないよ。加茂も大怪我はしているけど、すぐに治るさ」
「そう」
「……どうした、夏油。何かあったか?」
「なにも。じゃあ、私戻るわ。虎杖と東堂も一応診てもらえば?怪我してんだし」
「あ、おい」
虎杖の声を無視して私は医務室を後にした。
部屋に戻る気分にもなれなくて、だからと言って補助監督たちの邪魔もしたくなくて。
一人になれる場所をぶらぶらと探し歩いていた。
だけど、結局見つけられなくて部屋へと戻り鍵を閉めた。