第15章 交流
「消えたか?雑念は」
「ああ。雲一つねぇ」
虎杖の表情は先ほどとは打って変わって晴れやかだった。
東堂の平手打ちが聞いたのか、単純な虎杖の脳がそうさせたのか。
たぶんどっちもだな。
虎杖の成長を見守りながら、私も私で彼のように成長しなければいけない。
虎杖に、負けたくない。
そう思った。
「Thank you so much.ベストフレンド!!」
そう思っていたんだけど、虎杖が東堂の事をベストフレンドって叫んだ瞬間に、今まで考えたいたことが全部吹き飛んだ。
今の一瞬の間に、お前らに一体何があったんだよ。
今日会ったばっかだよな、お前ら。
「ツッコミが……足りねえ」
この場にそぐわないセリフが零れたことを、許してほしい。
私は今、何を見せられているんだろうか……。
満足そうな顔をした東堂が私の方へと戻ってくる。
目と目が合った瞬間にウィンクをされた。
え、何……、怖い。
「夏油は"黒閃"がどのように生み出されるか、知っているか」
「…………え、あ、うん」
東堂の行動一つ一つにドン引きしていたらレスポンスが遅れた。
「打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突し際に生じる空間の歪みを差すんだろ。威力へ平均で確か2.5乗。だけど"黒閃"を狙って出せる術師は存在しないって聞いたけど」
私も"黒閃"を出せたことないし。
「そう。狙って出せる術師は存在しない。が、"黒閃"を経験した者とそうでない者とでは、呪力の核心との距離に天と地ほどの差がある」
「………」
それを今、虎杖はやろうとしている。
どんどん離されて行ってしまうな、数か月前までは一般人だったくせに。
置いていかれるのは、嫌だな。