第15章 交流
そう思っていたら、電話に出る音がした。
私はできるだけ物音を立てずに狗巻棘にスマホを渡す。
私は私で耳から脳にかけて呪力で守る。
≪はい、役立たず三輪です≫
電話の向こうで三輪霞の明るい声が聞こえる。
明るい声だけど、悲しくなるような言葉を吐くな。
一体お前に何があったんだ。
「"眠れ"」
狗巻棘の呪言が電話の向こうの三輪に届く。
ドサッと地面地倒れる音が聞こえ、次に寝息が聞こえてきた。
「しゃけ」
親指を立てて、任務完了と合図をする狗巻棘は今度は玉犬の頭に手を置き「"戻れ"」と言葉を吐く。
それを見届け、ようやく私は守っていた耳を解放した。
「三輪霞を回収しに行くわ」
「明太子」
「呪霊がうろついてんだぞ。とりあえず安全な場所まで運ぶ」
「しゃけ」
京都校が虎杖を殺そうとしていて腹は立っているけど、だからと言って呪霊がうようよいる場所でずっと寝かせるわけにはいかない。
それこそ呪われて死んでしまう。
「誰かを心配するのに、東京だとか京都だとかそんなもん、関係ないだろ」
「しゃけ、すじこ」
どこにいるかはわからないけど、残穢を辿れば見つかるだろう。
三輪霞を回収するために歩きだした瞬間。
私も狗巻棘も背後から感じる気配に振り向いた。
この気配、二級呪霊か……?
いや、それに混じって何か変な気配がする……。
近づいてくる気配に二人に緊張が走った。
「こんぶ……」
狗巻棘は口元を隠している服のファスナーに手をかけ、私は両手に鍵を手にした。