第1章 復讐
「大きくなったね。今15だっけ?」
「うん。お兄ちゃんは大人って感じ」
「あはは、大人だよ。27だからね」
「かっこよくなってるから、緊張しちゃう」
「嬉しい事言ってくれるね、妹よ」
ソファに座る兄の前にコーヒーを出して隣に座ると、兄は私を思い切り抱きしめた。
大きくて優しい兄の身体に包まれ、自然と笑みが零れる。
今まで会えなかった時間を埋めるように、私も広くて大きい兄の背中に腕を回して抱きしめた。
「今まで苦労かけただろう。すまなかったね」
「ううん。お兄ちゃんが戻ってくるって思えば全然苦じゃなかった」
「その約束、もうすぐ叶いそうだよ」
「本当⁉そしたらお兄ちゃんと一緒に過ごせるの⁉」
「ああ」
「やったあ!!」
まさかこんな早くに叶うとは思わず、子供のように無邪気に喜んだ。
「その代わり、一つ約束してほしい」
お兄ちゃんと暮らし始めたら何をしようかな、と未来のことに想い馳せていると真面目なトーンで兄が私を見つめる。
「なに?」
「12月24日。絶対に新宿には来ないでほしい」
「わかった。けど、なんで?」
「親友とね、決着をつけようと思って」
少しだけ言葉に詰まるお兄ちゃん。
瞳の奥が揺れたような気がしたのは気のせいだろうか。
兄の言葉に私は、ずっと抱いていた疑念をぶつける。