第15章 交流
――夏油side――
「そろそろ時間だろ」
時計の針を見れば11時48分。
指定されたスタート地点に行くために私たちは控室を後にする。
野薔薇と禪院真希の後ろをぼうっとしながら歩いていると「しゃけ」と狗巻棘に呼ばれた。
「こんぶ?」
「あー、別に。元気だけど?」
「おかか」
「何もないって。大丈夫だってまじで」
何を心配しているのか、狗巻棘は私が何を言っても食い下がってくる。
何も無い事はなかったけど、大丈夫なのは本当だし心配されることもない。
だから根負けをするわけにはいかなかった。
少しだけ身長の高い狗巻棘を見上げれば、彼は軽く息を吐いて私の頭に手を乗せ優しく撫でた。
「ツナマヨ」
「……はいはい、わかったよ」
誰かにこんなに心配をされたことなど、ここに来るまではなかった。
だからこうして私の事を本気で叱って本気で心配して本気で喧嘩をしてくれるヤツがいることが、私のことを本気で好きだと言ってくれた奴がいることが、ここまで私を満たすなんて。
今はそれだけ十分なんだよ、割と真面目に。
「おーい、いちゃいちゃしてんじゃねえぞ。そこの二人」
「してねえわ。話してただけだろ」
少し離れた場所で私たちを呼ぶ禪院真希。
呆れながらも私と狗巻棘は足早に彼らの元へと向かったのだった。