第14章 明日
どのくらい泣いたのか。
そんなに時間は経っていないと思う。
泣き止んだ私は男の体をぐっと押した。
そしたらすんなりと離れてくれて、男の肩を見れば想像以上に私の涙と鼻水でぐっちゃぐちゃに濡れていた。
「…………弁償する」
「別にいいよ。クリーニングに出すし」
「じゃあ、クリーニング代は私が出すから」
「あはは、真面目だねは。何も気にすることはないよ」
「………」
「気は晴れた?」
「……まぁ、だいぶ」
「それはよかった」
よいしょ、と掛け声とともにベッドから降りる五条悟。
その男の服の裾を咄嗟に掴んだ。
驚いたような表情をする五条悟は、静かにベッドの淵に腰を掛けた。
泣いて腫れぼったくなった顔を見られたくなかったから。
下を向いたまま、私は口を開く。
「……あ、りが……と」
なんともぎこちないお礼。
恥ずかしくて穴があったら今すぐにでも入りたい気分だ。
もじもじとする私に五条悟は名前を呼んだ。
俯いていた顔をあげると、私の唇と男の唇が重なった。
啄むようなキスから、深い深いキスまで。
「んぅ、……っ」
漏れる息が、口から溢れる水音が。
部屋中に響いた。
舌と舌を絡ませ、お互いに何かを求めるようなその動きに。
体温が上昇していく。
久し振りに触れる五条悟とのキスに。
こんなにも、想いが溢れるだなんて。
気づきたくない、気づかれたくない、気づかないふりをしたい。
虎杖とは違って、食われるんじゃないかと思うような激しい口付け。
漏れ出る声と共に、私の想いがコイツに届いていやしないかと、不安になる。