第14章 明日
それでも虎杖を恋愛面で好きだと思ったことはなくて。
好きだけど、友達として仲間として好きなだけで。
虎杖の好意を無下にしたくなくて、ちゃんと返事をするって言ったのに、言えないままずるずるとここまで来て、今まさに虎杖を苦しめている。
それを解っていながら私はまだ、虎杖に返事などできずに。
「ありがとう」
それしか言えずに、また彼を傷付ける。
虎杖が私の胸で泣いて、しばらくすればその顔をあげた。
真っ赤に腫れる瞳は私を映し、その情けない顔に私は笑った。
「ふはっ。すげえ情けねえな、オマエ」
「……だって、仕方ねえじゃん……」
「ほら、部屋に戻るぞ。私もそろそろ医務室に戻らねえと家入硝子に怒られる」
「……最後にさ、一回だけキス、していい?」
「駄目に決まってんだろ。調子に乗んな」
おでこにデコピンを食らわせ、私は床に落ちている松葉杖を掴み、立ち上がる。
その間も何度も謝る虎杖だったけど、私が「次謝ったら嫌いになる」と言ったらピッタリと言わなくなった。
本当にまじで私のことが好きなんだな、こいつ。
その気持ちを私は今自分のために利用しているんだから卑怯だよな。