第14章 明日
「だから、わかんなくなった。自分で引金を引いて……わかんなくなったんだ」
静かに零す虎杖の言葉が、まっすぐに胸に届いて苦しい。
「正しい死って何?」
常に"正しい死"を信念にしている虎杖。
それはとても曖昧で抽象的で、「これだ」という答えは見つからないもの。
「そんなこと私にだって分かりませんよ。善人が安らかに、悪人が罰を受け死ぬことが正しいとしても。世の中の多くの人は善人でも悪人でもない」
死は万人の終着。
だけど、同じ死はどこにも存在しない。
それらすべてを正しく導くというのはきっと困難で苦しいこと。
「私はおすすめしません」
そう、七海は言った。
「などと言っても君はやるのでしょうね」
「……」
「死なない程度にして下さいよ。今日君がいなければ私が死んでいたように、君を必要とする人がこれから大勢現れる」
七海の優しい声は温かくて。
私に言っているわけでもないのに、自分に言われているような気さえしてきた。
「虎杖君はもう、呪術師なんですから」
話しはもう終わったのか、室内はシンと静まり返る。
中に入ろうと思ったけど、今は一人になりたいかもしれない。
そう思って、その場を離れようとしたが。
「そこにいるのでしょう、夏油さん」
「え?夏油いるの?」
中から声を掛けられた。
いつから私の存在に気が付いていたのだろう。
気配消していたつもりなんだけど。
顔だけひょっこり出すと、虎杖は安心しきった顔をしていた。
ほっぺにはガーゼがしてある。
見た感じ軽傷っぽい。