第11章 試行
勝負に負けたら言うことを聞く、という約束ではあるけど。
でも、抱く必要なくないか。
欲求不満かと思っていたけど、こいつなら腐る程寄ってくる女がいるはずだろうに。
なんで毎回私を抱くのか。
私も今までなんでそのことに意識が向かなかったのか。
その時、私の頭の中の電球がピコンと光った。
もしかしてこいつ、私のこと好きなのか。
好きだから毎回私のことを抱くのか。
………。
………………………。
いや、それはないな。
どこの世界に、自分を殺そうとする人間を好きになる奴が要るんだよ。
ヤンデレだったらそう言う事ありそうだけど、五条悟に限ってそれはないだろう。
こいつ、女に執着しなさそうだし。
うん、やっぱり私はただの性欲処理機にすぎないわ。
自分で言ってて悲しくなってきた。
恐怖と恥辱と混乱とその他諸々のどでかい感情が渦となってぐるぐる回って、私の涙腺はそれらから避難するように馬鹿になって涙となって零れる。
この場からどうしても私自身も逃げたくて、私は自由な腕を上へと持ち上げ思い切り五条悟の頭へと叩きつけた。
無限を解いていたのか、ありがとう五条悟。
今、この時ばかりはお前にただ感謝をしよう。
ごすっと鈍い音と共に、五条悟の身体は一瞬だけ力が抜けて、その隙に股間を膝で蹴り上げた。
声にならない叫びをあげる五条悟は、ベッドから落ちて床で身体をくの字に曲げて悶えている。
若干涙目になっているけど、自業自得だ、馬鹿。
乱れた服を直して、私は医務室を逃げるように走り去った。
なんか色々痛い。
頭も鬱血痕も心臓も。
全部が痛くて、理由もわからない涙がただ零れた。