第11章 試行
お兄ちゃんのせいで大切な人を失ったあの女の気持ちはわからなくもない。
私もそうだし。
お兄ちゃんを殺した五条悟を殺そうとしているし。
復讐は復讐しか生まない。
【夏油傑の妹だから】
久し振りに応えた。
どこまで行っても私は恨まれる存在なんだな。
お兄ちゃんのせいでたくさんの人が死んだ。
となれば、その身内を恨みたくも呪いたくもなるだろう。
「なんでお前がのうのうと生きてんだ」って言われたことは何度もある。
その度に思った。
「私がのうのうと生きていると思っているお前の目は節穴か」と。
「加害者の身内が受ける報いを幼い時から背負わされた私の苦しみはわからねえだろう」と。
不幸自慢したいわけじゃない。
どっちが不幸だとか辛いだとか悲しいだとか。
そんなの言い出したらキリがない。
それこそ天秤にかけられるもんじゃないし。
だからムカついた。
苦しんでるのがてめえらだけだと思うんじゃねえって。
ま、それを言ったところで悪いのは全部私だから言わないけど。
ただ。
あの女が復讐で私を殺そうとしたとき、思ったんだ。
復讐に囚われ荒み切ったその心は、虚しく満たされはしないんだなって。
不毛な循環しか生みはしないんだなって。