第11章 試行
その時、医務室の扉が開いた。
入ってきたのはグラサンをかけた五条悟。
何も言わずに静かにこっちへ来る辺り、これは説教だなってわかった。
「悪かった」
そう思っていたのに、五条悟の口からは謝罪の言葉が漏れた。
驚いて目を見開く私の手を五条悟は優しく包んだ。
「まさかこんなことになるとは思っていなかった」
「いや、誰も思わないだろ。補助監督が呪詛師と繋がって私を殺そうとしてたなんて」
「それでもだよ。僕はまた間違いを犯したんだ」
「犯してないだろ。何言ってんだ。違和感に気づかなった私のミスだ」
そう。
これは五条悟の責任ではない。
最初から違和感しかなかったのに、それに気づけなかった私の力量不足だ。
「アイツらは?」
「処分したよ」
「……そ」
まぁ、そうなるよな。
殺さないで、なんて思ってもそうはいかない。
また同じような事が起きても困るし。
静かになる医務室。
夏の風が入り込んで気持ちがいい。
てか、こいついつまで私の手を握っているつもりだろう。
振りほどくつもりはないけど。
こいつなりの謝罪なんだろうし。
五条悟は、どう思っているんだろう。
復讐に心を染め上げる私の事を。
私は、五条悟の目にどう映っているのだろうか。
「五条悟はさ、」
「うん?」
「私の事、どう思ってる?」
気づいたら、そう言っていた。
「…………えっと、それは、どういう意味かな?」
少し動揺を見せる男。
こいつでも動揺するのか、するか。
そりゃ人間だもんな。
「私が、お前を殺そうとしてること」
「あ、そっち。そっちね。はいはい、そっちかぁ~」
「そっち意外なにがあんだよ」
「ん~、何もないよ」
面倒なって教える気失くしたな、こいつ。
グラサンから少しだけ覗く五条悟の瞳を見つめ、私は口を開いた。