第11章 試行
――夏油side――
意識がゆっくりと覚醒する。
瞼を開ければぼんやりする視界の中、二つの顔が目に映った。
二つの顔は何か話していて、まだ寝ぼけている脳ミソは会話の内容を聞き取ってはくれない。
もぞりと動いて起き上がれば、4つの目が私を見た。
「あ、起きた」
「大丈夫か?」
「…………何が?」
見覚えのあるここはどうやら医務室の様だ。
人が寝ているベッドの上でこいつらは呑気にピザを食ってやがる。
しかもチーズ増し増しのマルゲリータ。
すげえうまそうなんですけど。
「オマエ、どこまで覚えている?」
ピザを食いながら伏黒がそう聞いてきた。
どこまで覚えてる……?
最新の記憶を読み込むのに多少時間を要したが、なんとなく覚えているのは……。
「睾丸を潰そうとしたのは、覚えてる」
「伏黒、顔青いけど大丈夫?」
「……平気だ」
「あ、ごめん。ひゅってなった?」
「もういい、黙れ」
男の前でする話じゃなかったな。
絶対想像しただろ、伏黒。
ちゃんと覚えているのはそこまで。
ぶっちゃけその後の事はあんまり記憶にない。