第11章 試行
「それは、本当に恋愛感情か。夏油の妹だからという感情も混じってないか」
「……どういう意味だよ」
「例えば、父親が娘を嫁に行かせたくない感情と似ていたり、つり橋効果のように意識してそれを好意だと勘違いしていたり。そういうものとは違うのかって聞いてるんだよ」
硝子の言葉に僕は少し考える。
確かにそういう気持ちがないわけではない。
もしかして僕のこれはただの勘違いなのだろうか。
そんなことを考えていると、伊地知が医務室へとやってきてあの二人が目を覚ましたと言う。
僕は席を外し、伊地知が調べまとめた資料に目を通す。
男の名前は寺山実。
一級呪詛師。
今までの犯行が全てこの寺山がしており、女であれば性行為をした後に殺害。
男であれば極悪非道なやり方で殺し、死体を遺棄。
そう、書かれていた。
文字を読むだけでも虫唾が走るな。
こいつ、を抱いて殺そうとしたって事だよな。
今すぐにでも殺してやりたい。
「寺山実は補助監督である杉田梨紗に依頼を受け犯行に及んだそうです」
「杉田梨紗はなんでを殺そうとしたかわかる?」
「どうやら去年、夏油傑が行った百鬼夜行で恋人を亡くしたそうです。その復讐だと……」
「……なるほどね」
僕は伊地知に資料を返し、歩き出す。
どこへ行くのかと聞く伊地知の言葉に何も言わなかったけど、言わなくても分かるでしょ。
あいつらに会いに行くんだよ。
足音だけを響かせながら、僕は二人の元へと向かった。