第11章 試行
これだけ鳴らして誰も出ないということははここにいない可能性も出て来た。
どこかに連れ去られたとなれば、高専に犯人側からなにか要求の電話が来るかもしれない。
そうしたら伊地知から僕に連絡が来るはずだ。
となれば、まだ連絡はない、と考えて言い。
部屋の奥の隠された扉を開けると、螺旋状になっている階段が地下へと続いている。
そこから聞こえる電話の音。
ここだ。
螺旋状の階段を降りると、礼拝堂よりも少しだけ狭い広間が広がっていた。
入り口には布で両手両足を縛られて気絶している女と、少し離れた場所には、右腕がない男が転がっている。
そして部屋の奥にはうつ伏せで倒れているが。
「!!」
急いで彼女の元へ駆け付ける。
身体を抱き起し、呼吸を確認すればただ寝ていることが判明した。
「寝てんのかよ……」
ホッと安堵のため息を吐いた。
が無事だとわかり、僕はもう一度辺りを見渡す。
この部屋に残る呪力との爆睡を見る限り、領域展開をしたのだろう。
「……蒲鉾と、ラスカル……が……」
固いアスファルトの上で、気持ちよさそうに寝るの口からよくわからない寝言が聞こえてきた。
蒲鉾とラスカルがなに、気になるんだけど。
その顔を見れば、口角を上げて笑っていた。
……どんな夢を見ているんだ。
の見る夢が別に意味で気になりつつ、僕は気絶している二人に近づく。