第11章 試行
階段を降りてきたのは、あの補助監督の女だった。
「なんで……?」
「まだ殺してなかったんすか。話が違う」
「真実を知らないまま死んでいくなんて、悲しいではありませんか」
私を挟んで二人は会話をしている。
混乱する頭で私は脳をフル回転させる。
そうだ、最初から違和感はあった。
配信者の所に行って話を聞こうと思ったのは、現場に着いてからだ。
それまでは私は配信者がそんな事をしているなんて知らなかった。
なのに、既に連絡はしてあると言った。
いくら仕事ができる人とは言え、流石の伊地知さんでも当日にそんなことできるはずがない。
だとしたら、それは彼女のブラフ。
私はそれにまんまと騙された。
「何が、目的だ。なんで私を殺そうとする」
「あんたが夏油の妹だからだ」
その言葉に、心臓が大きく脈打った。
久し振りにそんなことを言われた。
女は言った。
去年の百鬼夜行、たまたま京都にいた彼女と彼女の恋人は巻き込まれたと。
そして恋人は命を落としたと。