第11章 試行
教会の中をひとしきり歩いて感じたのは。
どこにも呪霊の気配がないと言う事。
「どういうことだ」
眉を寄せ、私はもう一度建物内を歩き回る。
そしてさっきは見つけられなかった秘密の部屋へと繋がる階段を見つけてしまった。
教会の礼拝堂の奥。
壇上の隅にその扉はあった。
ドアノブを回せば簡単にそれは開いた。
地下へと続く階段。
冷たい風が私の身体を包む。
壁にはアンティーク調のウォールランプが飾られ、足元を照らしている。
嫌な予感と言うものはどうしてこうも当たってしまうのだろうか。
ゆっくりと階段を降りてれば、礼拝堂よりも少しだけ狭い広間が広がっていた。
何もない空間に、男の姿が一つ。
「ようこそ、夏油さん」
男はゆっくりと振り向き、嫌らしい笑みを浮かべていた。
「オマエ、誰だ」
「嫌ですね、もう解っているのではないですか」
くすくすと笑う男に、悪寒が走った。
何を解っていると言うのか。
私は何もわからない。
「私が解っているのは、お前が呪詛師で殺人者ってことだけだ」
「おや、それしか解っていないのですか。なぜここに連れてこられたのか、あの人は話していないんですね。それもそうか」
何かを考えこむように顎に手を添える男に、私は眉間に寄った皺を更に濃くした。
何だ、何をこいつは言っている。
あの人って誰だ。