第11章 試行
彼等があの廃教会へ行ったのは配信者として駆け出しの頃だったらしく、5回目の心霊スポット巡りで訪れたという。
その時は特に変な現象などは起きず、と言ってもラップ音などはあったようだが。
それでも本当にただの肝試し程度だったという。
「心霊スポットって言われているけど、事件とかあったわけじゃなくて運営が難しいって話で牧師が離れて廃教会になっただけなんです。俺達はそれを心霊スポットって言って再生回数を増やそうと思ってて……まさかこんなことになるなんて……」
松坂が唇を噛みしめてうつむいた。
震える肩が今回の件の責任の重さを物語っている。
「三沢さんが亡くなったのは、今年の4月で間違いないんですね」
「はい……。急に姿を見せなくなって、捜索願だしたら……遺体となって見つかりました……」
「あの動画を出して、見ている人たちがその心霊スポットに行くようになったのはいつからかわかりますか?」
「さぁ。それはちょっと。ただ、……人気になり始めたのは1年くらい前からです」
「……なるほど」
「なにかわかったんすか」
ぶっきらぼうに大西はそう聞いてきた。
何もわかんねえよ。
ただ、彼らが火種になったってことしか私にはわからない。
それを憔悴しきっている彼らに言うつもりもないけれど。