第11章 試行
私は記事を閉じて、リストアップされた被害者たちの名前をもう一度見る。
その時、違和感を覚えた。
変死体として見つかって名前が挙がっているのはほぼ男性で、行方不明となっている名前はほぼ女性だ。
なにか、引っかかった。
こんな綺麗に、死体と行方不明者が、分かれるものだろうか。
「着きました、ここです」
「ありがとうございます」
深く考える前に、車が止まった。
マンションの302号室。
ここが配信者たちが活動している拠点らしい。
インターホンを鳴らせば、数秒後ゆっくりと扉が開かれた。
扉を開けた青年の瞳の下は濃い隈があって、寝れていないことが伺える。
家入硝子よりも酷い顔をしている。
青年は私を見ると、少し怪訝な顔をした。
そりゃそうだろうな。
自分よりも年下の女が今回の件で話を聞きたがっているのだから。
おおよそ、霊媒師的人間を想像していたんだろうな。
「……入ってください」
考える事をやめた青年は私たちを家の中に招き入れる。
奥の部屋ではこれまた、酷い顔をした青年がソファに座っていて、私たちを見るなり静かに立ち上がって頭を下げた。
「お待ちしてました。どうぞこちらに座ってください」
今まで自分が座っていた場所を空けて、彼は私たちにそこに座るように促す。
随分とやつれているけど、仕方ないか。
友人があんな死に方をしたらトラウマになるだろう。
「早速ですけど、お話きかせてください」
「はい……」
男、松坂龍一(21)と扉を開けた男、大西翔太郎(20)は目を合わせた後、静かに口を開いた。