第11章 試行
「とりあえず、話を聞きたいのでその配信者たちのところに行きたいんですけど」
「はい、もう連絡はしてあります」
「仕事早くないですか」
「いえ、連絡をしたのは私ではなく伊地知さんです」
「……流石過ぎません、あの人。優秀かよ」
私はこの場にいない伊地知さんに感謝をした。
あの人、本当に事務仕事はめちゃくちゃできる人だからな。
「ただ、ひとつだけ言っておくべきことが」
「なんですか」
車に乗り込み、配信者に話を聞きに行こうとしたとき補助監督が言いづらそうに口を開いた。
「一人、死んでるんです」
「え……?」
「三沢裕也という21歳の大学生なのですが」
死亡者・行方不明者リストを見れば確かに名前は乗っていた。
詳しい死亡は書かれてはいないが、ニュースにはなったようで、私はその記事を検索する。
三沢裕也(21)は地元の大学生。
19歳の時に心霊系配信者となったらしい。
死体は湖で見つかったらしく、その遺体は見るも聞くも悲惨な状態だったと言う。
頭部と胴体は切り離されたうえで、首と胴を繋ぐようにパイプが刺さっていたらしい。
なおかつ、目は抉られ、手はぐちゃぐちゃに焼かれ、足もまたぐちゃぐちゃに叩きつぶされた状態で湖の上にゆらゆら漂っていたと言う。
「……っ」
「そう、なりますよね……」
文字を読んだだけで気持ちが悪くなった。
口を手で押さえる私をバックミラー越しに見た彼女は、運転をしながら後部座席の窓を開けた。
入ってくる空気がぐるぐる回る肺を換気した。
持ってきた水を少し飲んで、息を吐く。
先ほどよりはだいぶマシになった。