第10章 人形
「何、泣いてんの?泣けば僕が優しく慰めるとでも思った?」
「……思ってねえわ。目にゴミが入っただけだ。うぜえ」
「あっそ。でもまぁ、正直僕はは今回も何もできないんじゃないかって思っていたよ。その為に僕はここにきたんだし」
いきなりなんでそんなことを言い出すんだ。
慰めるつもり、ないんじゃなかったのかよ。
「ごまかさずに、自分にできることを考えた結果がこれなら上出来。というか上出来以上だね。少しオマエを見くびっていたかも。あ、これ慰めじゃないよ。僕の個人的感想」
「……言わなくてもいいよ、そんなこと」
慰めかもしれないと思った私が馬鹿みたいじゃないか。
頬に伝う涙を袖で拭って、鼻をすする。
そんな私に五条悟は話し続ける。
「今の自分が絶対じゃない。僕だって今でこそ最強だって言われているけど、昔は間違えまくったし後悔も少しだけした。そんで今の僕が出来上がったわけだけど、成長するってのはそういうもんだと僕は思うよ。だからもたくさん間違いをすればいい。その度に僕がこうして説教してあげるから」
「…………教師みてえなこというんじゃねえよ」
「教師だよ。それにオマエの担任なんだけど」
「ああ、そうなの。あまりにも子供じみてるから教師だってこと忘れるんだよな」
いつものやり取りになってきて少し安心した。
五条悟も私がいつもの調子に戻ったことに「クソ生意気」だと言って笑った。