第10章 人形
「……んだよ」
「今回のこの件はオマエが一人で決めたことだ。僕や伊地知の意見を無視して、やるって言ったのはオマエだ」
「……それがなに」
真面目な声で、真面目なトーンで。
こういう時の五条悟は正論しか言わないし、言い返せないから苦手だ。
普段はふざけ倒しているのに。
マスク越しだというのに、五条悟から視線を外すことができなくて、ただ耳を傾けるしかない。
「同情しないよ、僕は。そうやって落ち込んでふさぎ込んでいても。叱りもしなければ褒めもしない。同情もしない。慰めたりもしない。自分が傷つくたびに優しい言葉を貰って構われたいなら、何もせずに死ねばいい」
腹の奥が急激に冷たくなった。
それと同時に鉛を飲み込んだのではないかと思うほどにずっしりと重たい。
ああ、息がつまっているんだ。
ここから逃げたいと思うのは、図星だからだろう。
「は優しいよ。優しいし愛情深い。異形のものにすらマリアのごとく愛情を注ぐ。そして同時に卑怯で愚鈍だ。自分一人だけが傷つけばそれで済むと思ってる。だから自分よりも相手を優先するし、死んでもいいと思ってる。自己防衛のつもり?甘ったれがオマエの中で流行ってるの?」
次々と紡ぎだされる言葉の数々は私の心にぐさぐさと突き刺さる。
今にも泣いてしまいそうで。
我慢しようとこらえるけど、こういう時ってなぜか簡単に零れてしまう。
みっともない。