第10章 人形
新幹線がゆっくりと動き出す。
私と五条悟の間に沈黙が流れる。
少しずつ速度を上げる新幹線は、景色を次々と追い越していく。
それを目で見送りながら、私は静かに口を開いた。
「どうしようもないって事はわかってたよ。仕方がないって。だって彼女は呪骸だし、放っておけば危険だから」
あの時。
お兄ちゃんを殺したのは仕方がない事だといった五条悟と同じことを私は彼女たちに告げた。
自分が言われて納得ができなかった言葉を投げた。
皮肉だと思った。
理解してしまったから。
「先延ばしにしたってたぶん今と結果は変わんないんだろうけど、後になればなるほど辛くなるってわかってたし、あの子達にそう言う思いをさせる位なら、今すぐの方がいいってわかってはいたんだ。だけど、一瞬だけ、ほんの少し、今すぐじゃなくてもいいんじゃないかって。そう思ったんだ」
いなくなる辛さを私も知っているから。
置いていかれる悲しみを。
だから、もう少しだけ側にいさせても罰は当たらないんじゃないかって。
でもそれはただの言い訳に過ぎない。
自分と似たようなことだからそうしたくないと言うのが本音。
「自分の都合のいいように解釈をしてそれで済まされていいわけがないんだ。私は呪詛師ではなく、呪術師だから」
「」
小さな声で自分の思いを話し続けた私の名前を呼ぶ五条悟は、まっすぐに私を見つめる。