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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第10章 人形







伊藤さんの車に乗り込んで、私は黙ったまま青森駅へと運ばれる。
もちろん五条悟も。
青森駅に着くまでの間、私達の間に会話は一切なかった。
居心地の悪い空気だけがその場を支配し、伊藤さんが何度もバックミラー越しに私たちを見ていたのを私達は気づいていた。
気付いていたけど、気を回している余裕などなかった。

比較的空いている新幹線。
自由席はないから必然的に指定席になる。
そして当日券を二人で購入したため、席は隣。
東京までの道のりずっとこいつが隣にいるのかよ。
深いため息を吐きながら私は窓際の席へと座った。

「お疲れ様」

その時、五条悟が私に労いの言葉をかけてきて思わず目を見開いて男の方を向いた。
頭に掛かる重力に、今頭を撫でられているんだと気づくのに数秒かかってしまった。

「実は朝からずっとの事見てたんだよね」
「は?」
「僕が側にいたら甘えるでしょ。だから遠くから見守ってた」
「マジかよ」
「まじまじ大マジ」

ダブルピースをする男は「えへへ」と笑っている。
ぶん殴りてえ。
頭に乗っかる五条悟の腕を払いのけ私は背もたれに深く寄りかかる。
ずっと私を見ていたならわかっているはずだ。
私はあの時と何一つ成長していないってことに。
祓えはしたけど、もっとスムーズに祓えられたはずなのに。
呪いに同情して、少し躊躇した。
それをこの男が見落とすはずがない。
何も言ってこないのは、私が自分でそれを解っているからだ。





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