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【呪術廻戦】新世紀の『I LOVE YOU』

第10章 人形







「記憶がなくて、寂しいって思った事はないの?」

私の質問に彼女は満面の笑みを浮かべた。
それが意外で私はその笑顔に目を奪われる。

「思った事ないです。分からない過去のことに悩んでても意味ないし、今はお父さんもお母さんも優しい友達もいる。将来の夢もできた!それを考えると寂しいだなんて思うはずがない。私は今すごく幸せ!!」

幸せ……。
私は今から君の幸せを壊そうとしている。
ごめん。
君はここに存在してはいけないから、私は君と君の周りの人の幸せを奪うよ。

「そう……。おじいちゃんも優しかった。あまり思い出はないけど。ずっと一緒にいた。ずっとそばにいて話を聞いてくれて。幸せだった」
「………君は、自分が何者か、気づいているね」
「……ええ」
「そして、私がここにいる理由もわかっている」
「…………ええ」

いつから気づいていたのかなんて、そんなのは知らない。
だけど彼女は自分の運命を受け入れようとしている。
零れそうになる涙をこらえるために、上を向き深く息を吸った。

その様子に、彼女は小さく笑みを零して。

「優しい人ですね」
「どこが。今から私は君の幸せや夢を奪う悪者だよ」
「いいえ、優しい人。そうやって綺麗な涙を流せるんですから」

そっと彼女の手が私の頬に触れる。
自分の頬が濡れていることに気づきこらえるが、いくつも零れ彼女の手を濡らす。




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