第10章 人形
次の日。
学校が終わる時間を見計らい、私はまたあの公園に来ていた。
昨日彼女たちがいたあのベンチに腰掛ける。
今日この場所に来る確立なんてどのくらいなのか分からないのに。
それでも来ると信じて、ただ私は彼女を待っていた。
どのくらい待っただろうか。
ちくりと、意識の端っこに"淀み"を感じた。
ゆっくりと視線をそちらへ向ければ、ばちりと目と目が合う。
昨日と同じ、逃げられるだろうかと思ったが、彼女はふわりと笑って私の座るベンチの横に腰を下ろす。
「こんにちは」
絹のように柔らかい声に、私も挨拶を返す。
長い髪の毛が風に揺られなびく。
どこからどうみても"人間"にしか見えないが、彼女は呪いだ。
祓わなければいけない対象。
「お友達は?」
「私に食べさせたい物があるみたいで、どこかに行っています」
「へえ」
「月に一回しかこないお店みたいで、今日がその日だって言ってました」
「なにそれ。すごい気になるんだけど」
昨日とは打って変わって、彼女は逃げるどころか私との会話を楽しんでいる。
月一で来るお店ってことはキッチンカーか何かだろうか。
彼女のためにサプライズをしようとする友人の事を考えると、私の頭の中にもあいつらの顔が浮かぶ。
思わず笑えば、西崎美優もまた笑った。