第10章 人形
この無言のざわめきに、私は耐えられなくて。
私の不安を五条悟に押し付けてしまった。
「西崎美優は、祓うべき"人間"で合ってるん、だよな?」
間違いでないはずなのに。
なんでそんなことを私は聞いてしまったのだろう。
≪。オマエはもうこの件から手を退け。そんな状態で仕事できないだろ。あの時の二の舞になる前に高専に帰りな」
深いため息と共に五条悟が言った。
やっぱり、オマエはそう言うよな。
分かってたよ。
分かっていたけど、それ以外の言葉が聞きたかった。
私にはできないってオマエにだけは思われたくなかった。
「……………だ」
≪なに?≫
「………やだ」
小さな抵抗をしてしまった。
そう思われているのなら、そう思われないようにする。
それでオマエが私を認めてくれるなら。
「私がやる。……けど、側で見てて。もし駄目だってなったら、その時は、オマエが……」
それでもやっぱり少し不安だから。
側にいて欲しい。
もし私があの時のように躊躇してしまったら、多分私は今度は祓えないと思うから。
ただの我儘だってわかってる。
甘えだとも。
それでも、私を心配してくれるなら。
≪何甘ったれたこと言ってんの?やるってんならオマエがやれよ。そうやって後ろ盾を立てるくらいなら最初からやるな≫
だけど、私の思いとは裏腹に五条悟は私の頼みを一刀両断した。
自分でも息を呑んだのが分かった。