第10章 人形
気付いたら私は五条悟に電話を掛けていた。
すぐに電話にでた五条悟の陽気ともいえるムカつく声が今の私には居心地がよく安定剤となっている。
今どこにいるのかは知らないけど、電話に出たあいつは一級術師のやつと言い合っている。
酔っぱらうとかノンアルとかって単語が聞こえるあたり居酒屋だろうか。
それにしては静かだけど。
いや、今はそんなことはどうでもよくて。
「……私の話し聞いてるか?」
少し呆れながらもそう聞けば、五条悟は明るい声で「何か問題でも起きた?」と尋ねる。
バリバリ問題起きてるよ。
私はそう説明すればいいのか、自分の精神状態もぐらついたまま西崎美優の事について話した。
アイツならどうすればいいのか教えてくれると思ったから。
西崎美優が昭和49年生まれなのに、今女子中学生で14歳であることを告げれば「マジか」と呆れたようなめんどくさがるようなそれでいて少し悩んでいるようなそんな声を漏らした。
そう言った後、五条悟は何かを考えこむように黙ってしまった。
無言の時間が過ぎて、かすかに聞こえる店のBGMがやたらと大きく聞こえる。