第10章 人形
小さい抵抗。
その声に僕は苛立ちを覚える。
が、僕が口を開く前にが言葉を吐いた。
≪私がやる。……けど、側で見てて。もし駄目だってなったら、その時は、オマエが……≫
「何甘ったれたこと言ってんの?やるってんならオマエがやれよ。そうやって後ろ盾を立てるくらいなら最初からやるな」
≪……っ≫
息を呑む音がした。
自分でもわかっているんだろう。
自分の甘さが、それを指摘された悔しさが。
≪……やる、よ。これは私が任された任務、だから≫
「そう。僕は明日東京に戻るけど、困ったらいつでも電話してきていいからね。手助けはしないけど」
≪……………………≫
長い沈黙の後、電話は切られた。
スマホをカウンターに置いて、いつの間にか目の前に置かれたノンアルのグラスを手に取り一気に降下した。
あんなことを言ってくるなんてらしくない。
動揺しているんだろうけど、そんなことで動揺されちゃ困るな。
オマエには強くなってもらわなくちゃいけないんだから。
「ということで、七海。僕、明日朝一で青森に行くから」
「……そう言うと思いました。私は帰ります」
「はメンタルが弱くて駄目だね」
「誰もが貴方みたいにメンタルが強いと思わない方がよろしいかと」
人聞きの悪い。
僕だってメンタルがやられるときはあるんだから。
1億年に一回の頻度で。
「……悠仁とのこと、頼んだよ。七海」
「………わかりました」
渋々頷く七海に、僕は静かに笑みを零した。