第10章 人形
「何か問題でも起きた?」
≪西崎美優についての事だけど≫
「その子がどうしたの?」
≪伊地知さんに調べてもらったんだ。出生とかそういう……≫
「うん、それで?」
随分と歯切れの悪い。
もしかして僕たちの案件より、あっちの方が面倒だったパターンか、これ。
≪西崎美優、今14歳のはずなんだけど、生まれが昭和49年なんだよ。これってさ……≫
「………マジか」
純粋な声が漏れた。
も嫌な予感がしていたのかその声は震えている。
どこのどいつだよ。
反魂を成功させた術師は。
現代の術師がおいそれと作れる代物じゃない。
古い呪術師の家系の成れの果てが、蔵の底から掘り出した暴走呪物だと七海と話していたことを思いだす。
まさか成功例がの前にいるとは。
これは流石にには任せられない。
あいつは根が随分と優しい分、呪霊に肩入れし同情する節がある。
その結果、呪霊の子供をその身に宿したのは記憶に新しい。
そんな奴に務まる任務じゃない。
≪西崎美優は、祓うべき"人間"で合ってるん、だよな?≫
ほら見ろ。
無意識のうちに"人間"という言葉を使っている。
西崎美優は人間じゃない。
呪骸に魂が宿っただけのただの人形だ。
早く手を引かせよう。
「。オマエはもうこの件から手を退け。そんな状態で仕事できないだろ。あの時の二の舞になる前に高専に帰りな」
≪……………だ≫
「なに?」
≪………やだ≫